ストレスとニキビの意外な関係

「チョコレートや甘いお菓子を食べすぎるとニキビができる」じつは、これは皮膚科学の世界ではあまり根拠のない迷信だと考えられています。

ずいぶん前、ペンシルバニア大学でおこなわれた「ニキビとチョコレートケーキ」の関係を調べた研究があります。

学生を集めて、チョコレートケーキを毎日食べつづけるグループと、食べないグループをつくり、数週間後、ニキビの発現率を比較したのです。

数週間後、被験者となった学生を集めてみると、両者の肌に差はありませんでした。

その結果を受けて同大学の研究チームは「チョコレートとニキビの悪化とは無関係である」と発表しました。

また、アメリカの食品医薬品局でも、「特定の食べ物の摂取とニキビとは直接関係はない。科学的に説明がつかない」と発表しています。

つまり、ナッツ類やコーヒーなどチョコレートと同様にニキビの元凶とされることが多い食べ物も、ニキビとの因果関係は証拠不十分とされ、無罪放免になったのです。

チョコレートでニキビができたと勘違い!?

ですが、診察室で患者さんの話を聞いていると、「チョコレートを食べると翌日、かならずニキビができる」などと訴える方もたしかにいらっしゃるのです。

なぜ、「チョコレートでニキビができた」と訴える人は絶えないのか…そう考えていたとき、ニキビの患者さんから話を聞いているうちに「食行動」の問題に気づきました。

チョコレートなど特定の食品自体がニキビの引き金となったのではなく、食べたときの状況や量、どんなふうに食べたかなど、食行動そのものに原因があるのではないかと考えたのです。

チョコレートでニキビができたという忠者さんの多くは、大袋を一気に食べてしまう、そこにあるお菓子も含め全部食べてしまうなど、食行動の暴走を起こしていました。

ストレスがつづいてうまく乗り越えられないときに、もともと好物のチョコレートを食べることで、一時的に問題を忘れられて嫌な気分がおさまったのですが、大量に食べてしまったあとは、往々にして、こんなに食べるんじゃなかった、と後悔の念にさいなまれることも少なくありません。

これはストレスが高まったときに、好きな食べ物を過剰にとる食衝動を起こすことで、そこから気持ちをそらそうとする逃避行動のひとつだったのです。

チョコレートの原料であるカカオには、脳に刺激を与え元気にする少量のカフェイン、リラックス効果のある多くのテオブロミンが含まれます。

また、チョコレートに含まれる糖分はすみやかに脳のエネルギーになります。

チョコレートは、精神的に落ち込んだときゃからだが疲労困蝕したときに、手を伸ばしたくなる食べ物の代表格といえるかもしれません。

だから、大好きなチョコレートを無理してやめる必要はないと思います。

その代わり、気晴らし食い以外にもストレスを発散できる方法を探しましょう。

好きな音楽を聴いたり、香りのいいものに固まれたり、なんでもいいと思います。

「チョコレートは絶対食べない!」という意志の力やスローガンだけでは、人間の行動はなかなか変わりません。

むしろ、そこに気持ちが集中することで、ますます食べたい意識が強まる悪循環におちいることもあります。

しかし、別の行動をとってみることで意識が切り替わり、問題行動が軌道修正されることがあります

不規則な食生活が原因でニキビが!

不健康な食行動は、いわば下手なストレス解消の一手段といえます。同じような逃避行動として、ニキビをひっかいたり、つぶしたり、いじったりという行動もあります。

じつは慢性化してなかなか治らない大人のニキビの患者さんには、ときどき、このひっかく、つぶす、いじる行動がみられるのです。

ニキビが気になってつぶす行動がくり返されるうちに、いつのまにか、それがイライラや疲労などのストレスを解消する手段として定着してしまうことがあります。

ストレスがかかったときに、一方ではチョコレートの食べすぎ、一方ではニキビをいじる行動に走ることで、一時的にストレスを解消し、結果的にニキビ
を悪化させてしまうわけです。

人は、自分のストレスは自覚しにくいものです。

それが、〈チョコレート→ニキビ〉の図式がもっともらしくみえてしまう理由のひとつです。

慢性化した皮膚疾患には、こうしたストレスによるひずみが原因に潜んでいることがあります。

大事なことは、自分のストレスに早く気づいてあげることです。

そうすることで行動が変わり、心も切り替えやすくなる。

それによって肌も少しずつ変わっていくのです。